2006年 レコーディング日誌 3月号


 今回レコーディングする曲は『Dear Friend』という、かちがらすホームページの5000カウント記念ソングである。
10000カウントのキリ番をゲットしたのが、その歌の作詞者・ひろこさんだったので、「じゃあ、かちがらすでこの歌をレコーディングして、CDに焼いて記念にプレゼントしよう!」ということになったのだ。
例によって、曲のギターコードを説明した実演ファイルをHP上のメンバー専用ページにアップし、ボーカルは用務員に、メインギターのスリーフィンガーは評論家に、リズムギターはリーダーに、そしてコーラスとリードギターは幸松と、担当を振り分けて、レコーディング日までに各自自分のパートを練習して置くように通達しておいた。
 
 
3月5日 日曜日 晴れ

 評論家と用務員に「今回は演奏に使用する楽器・ギターの選択を全て二人に任せるから、自分たちの好きな楽器を使っていいよ」と言っておいたところ、評論家はラルビーのナッシュビルギターを、用務員はオベーションの12弦ギターをそれぞれ自宅から抱えてやって来る。
前奏、間奏、後奏などの打ち合わせを簡単に行ってから速レコーディングに入る。
ギターのチューニングはリーダーが、テンポの設定は用務員が行う。

 Rec.0: 僕と用務員、二人で仮歌と仮ギターを入れる(同時録音)。今後これに合わせてギターを1パートずつ入れていく。
 Rec.1: ギター・ストロークパート(リーダー)。ギブソンJ-200使用。この曲はテンポが速いので途中で失速。腕が疲れてくるとリズムキープが乱れ、その時点でNG。数回やり直し、何度目かにクリアー。
 ※ここで早くも[Rec.0:]の仮ギターはお役ごめんとなる。
 Rec.2: ギター・スリーフィンガーパート(評論家)。マーチンD-40使用。評論かもリーダーと同じで、早いリズムに途中から疲労の兆し。指がもつれるのかリズムが怪しくなってくる。それでも根性で頑張る。完走した時点で、今のを消さずに残しておくように用務員に頼み、再度別トラでチャレンジ。そうやって3パターン録音して、本人が最も納得するものを採用。1時間くらいひたすらスリーフィンガーを弾き続けていたせいか、かなりしんどそう。

 ギターのストロークにしても、アルペジオやスリーフィンガーにしても、数分間一定のリズムをキープしながら、ひたすら坦々と同じパターンを繰り返し弾きつづけるのは想像するよりも難しい作業である。
要所要所で1拍ずつでもブレークを入れるか、別のパターンの奏法を入れて変化をつけると、その部分で生き抜きや気分転換ができてずいぶん演奏が楽になるのだが。僕らの場合、どうもそのように変化をつけて演奏するだけの技術、というか気持ちの余裕がない。とにかく間違えないように、リズムを踏み外さないように、そのことでもう必至なのだ。だから余計に腕や指の筋肉が緊張して硬くなって、練習の時は上手く弾けるのに、録音となると失敗したり、ぎこちない演奏になったりしてしまう。それはライブの時でも言える。とまあ、弁解はこのくらいにして。

 Rec.3: ナッシュビルギターのスリーフィンガーパート(幸松)。ラルビー使用。評論化がお疲れなので、僕が急遽ピンチヒッター。ナッシュビルは不通の6弦ギターよりも弦が細い分スリーフィンガーは弾きやすいように感じる。評論家も先にこちらを弾いておけば指のウォーミングアップになってよかったかも。録音は1〜2回でクリアー。それにしてもこのナッシュビルの音色はとても綺麗で、しかも軽快で、弾いていてなかなか気持ちいい。なんだか病み付きになりそう。

 時計を見ると12時30分になろうとしていたので、午前の作業はここまでとし、昼食タイムに入る。例のごとく大宮ストアーでカップ麺と巻き寿司、惣菜、クッキー、シュークリームなどを買ってきてみんなで食べる。お茶はもちろん急須で作る。
午後は、僕と用務員のパート取りだ。2時頃から始めるのでそれまでにギターのチューニングを済ませておくように頼んでおく。と言っても、あと使うのは12弦ギターだけだ。このギターのチューニングは、持ち主の用務員が電子チューナーを用いて行う。

 Rec.4: 間奏・後奏のリードギター(幸松)。オベーションの12現を使用。簡単なフレーズなので2〜3回でクリアー。
 ※ここで[ Rec.0:]の仮歌も不要となる。
 Rec.5: ボーカルパート(用務員)。わずか1回でクリアー。さすがである。リーダーも彼の安定した歌唱力と低音の効いたボーカルにいたく感心している。
 Rec.6: コーラスパート(幸松)。ちゃんと練習してきたはずなのに、1ヵ所どうしても音が取れずに苦戦。その部分に差し掛かると主旋のメロディーが大きく目の前ならぬ、耳元に立ちはだかり、自分の音が取れなくなる。今更ながらコーラスの難しさを実感。10回くらい歌い直しただろうか。なんとかごまかし強引にOKの自己申告。これで勘弁して・・・。
 Rec.7: ギター・裏メロ(幸松)。オベーションの12現を使用。このパートは僕が怠慢していて全く考えていなかったので、その場で即興的に考える。これまで録音した演奏をリピート再生してもらい、それを聴きながらギターを弾いて歌に合うバックのメロディーを作り出す。横であれこれと注文を出してくる評論家に「もう、うるさいなあ!」と内心思いつつも、できるだけ彼の希望に沿うように根気強く煮詰めて行く。30分くらいで何とか形になる。録音は数回でクリアー。

 この時点で4時30分。録音の作業が一段楽したので一休みして、NBCラジオの「ラジおじ」をみんなで聴く。先月にレコーディングした『すずらん通り』が番組の最後の方で流れる。この歌の歌詞は梅さんの実体験であることが判明。それにしても、自分たちの演奏がラジオから流れてくるのはやはり感動ものである。

 5時から作業再開。次はミックスダウンである。
最初、ナッシュビルギターを中央に置いて、リーダーのストロークと、評論家のスリーフィンガーを左右に振り分けていたが、リーダーの提案で、中央のナッシュビルと左のストロークを入れ替えたところ、以前よりもすっきりとしたバランスの良いギターサウンドに変化する。その辺りの音のレイアウトはさすがだなと、リーダーの耳に改めて彼の音楽的センスを感じる。
今回は評論家のギターの音を少し大きめにして、リーダーのストロークを控え目に、僕のナッシュビルはさりげなくという感じで音作りをしてみる。
「うん、これでよし!」
リーダーからもOKが出たので、いよいよミックスダウン。となるはずだったが、ちょっとした機会の操作のトラブルで先へ進むことができなくなり、この日の作業はここで打ち切りとなる。

 
3月12日 日曜日 雨のち曇り

 午前中、先週の残りの作業を行う。
再度ミックスダウンをやり直して、cd-Rに焼く。プレゼントするにしても、cdに1曲だけというのはいくらなんでも寂しいので、カラオケも付けることにする。
ボーカルの音を消して、ギター演奏だけをミックスダウン。ここで、コーラスをどうするかメンバー間で話し合う。
「不通、カラオケってコーラスも入っているだろう?だから入れておこうよ。」
とみんなは口々に言う。しかし僕は一人で反対する。
コーラスで1ヵ所どうしても気になる所があるからだ。ボーカルと一緒に歌っているにはさほど目立たないが、コーラスだけを再生するとなると、やはりその部分が浮彫になり、僕の歌の下手さが露見してしまうではないか。
僕は頑なにコーラス無しバージョンを主張し、強引にそれで押し切る。
「このカラオケどうしてコーラスが入っていないの?」
と、尋ねられた時は、ちゃんと相手が納得するように幸松ちゃんが責任を持って説明してよね。
用務員はよほど不満なのか、諒承するのと引き換えにヘンな責任を僕に押し付けてくる。
「困ったなあ!でもね、不通そんなこと尋ねたりはしないと思うな。」
カラオケも先程と同じようにミックスダウンして、CD-Rに焼いて、これでレコーディングの作業は終了。

cd-Rに焼いた作品を聞き返してみると、確かにカラオケはちょっと寂しい音になっている。はたして不通の人がこれを聴きながら歌うことなんてできるのだろうか。こんなことなら、カラオケ用にコーラスをもう一度取り直せばよかったかなとも思う。
おかしいのは1箇所だけなので、その部分を歌い直せば事は済んだのだ。ボーカルが入らなければいくら僕でもちゃんと歌えただろうし。とは言ってももう後の祭り。演奏はすでにCD-Rの盤の中に収まってしまっているのだから。
曲を収めたcd-Rは用務員が自宅に持ち帰って、プレゼント用にラベルやジャケット、歌詞カードなどを作製してくれることになっている。
さあてどんなcdが出来上がるのやら、僕もワクワクしながら完成を待ちたいと思う。

 昼食を挟んで、午後からは気分を新たに、4月2日のライブに向けての練習に入る。
頑張らなくては。

 

 これまでホームページのヒット数が1000、2000、5000に達した時点で、その記念に一般から歌詞を募り、曲をつけて発表してきた。
しかしいずれも演奏・歌共に僕が一人で行い、ほとんどがギターの弾き語りというスタイルだった(1000カウント記念ソングは別だが)。
そこで今回は、メンバーみんなに関わってもらいたいと僕は考えたのである。
なるべく僕が前に出ないような編成で、ボーカル、楽器の担当を振り分けた。そして、アレンジもできるだけ他のメンバーの意見を優先するようにした。
 今、こうやって完成した作品を聴き返してみると、それで正解だったとつくづく思う。
 評論家が自分の判断で持ってきたナッシュビルギターは、曲のサウンドを軽快に、かつ爽やかにしてくれているし、用務員が持ってきた12弦ギターも、それを一段と引き立ててくれている。
これはリーダーも言っていたのだが、ナッシュビルギターのキラキラした軽快なサウンドと、用務員の低いゆったりしたボーカルとのコントラストが実に面白い。
原曲では僕がDのキーで歌っているのに対し、用務員は5度下のAのキーで歌っている。
最初、メンバー用にコード説明をアップする時に、僕もAのキーで歌ってみたが、あまりにも低くて歌えなかったので、僕は用務員に「ほんとうにこのキーで大丈夫か?」と思わず念を押してしまった。
いやあ、この低音のボーカルは恐れ入ったって感じである。
ギターの音量のバランスだが、以前、評論家の熱烈なファンから「評論家さんのギターを聴きたい」という意見が上がっていたので、今回ミックスダウンの時に意識して評論家のギターを一番目立たせたつもりだった。それなのに、ホームページ上で聴いた感じでは、ナッシュビルの方がやや目立っているような気もする。ギターの音質の特性によるものか、パソコンのスピーカーの加減なのか、どちらのせいかはわからないけど。でも、ボリュームを少し上げるか、ヘッドホンで聴いてもらうと、彼の弾くギター(スリーフィンガー)ははっきりと右の方から聴こえてくるので、ぜひそうやって聴いていただきたいと思う。
 プレゼントのCDには、レコーディングした演奏以外に用務員が同曲のオルゴールバージョンを作り、それも一緒に収録して送ったそうである。
ジャケット製作も含め、今回も用務員が一番多くの作業をこなしてくれた。ほんとうにご苦労さん。

 こうやってみんなで一つの作品を作り上げるというのはやはり楽しい。録音の時はかなり緊張もするが、それはそれで練習にもなってよい。こういう風にメンバーみんなが関わってくれるなら、またいつか同様のイベントを企画してみたいと思う。
2006年3月24日

 
『Dear Friend』を聴く オルゴールバージョンを聴く ※ 上の二つの音楽ファイルは、いずれもMP3ファイルです。


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