「ワールド・ピース・ナウ」野外ライブ


●イベント名 WORLD PEACE NOW
●場所 佐世保・島瀬公園
●日時 3月20日(土・春分の日)
1:00PM〜6:00PM
●主催 WORLD PEACE NOW SASEBO

●キャッチコピー
「イラク攻撃は間違いだった」
「ピーストーク&ピースミュージックで楽しく平和を創ろう」
「グッバイ・ブッシュ グッバイ・小泉くん」
「人道支援に武器はいらない」

3月20日 土曜日 曇り時々小雨


 3時にリーダーの家に集まって簡単な音合わせをしてから、戸辺ちゃんの車とタクシーに分乗して僕らは会場である島瀬公園に行った。現地に着いたのは確か4時を少し回った頃だったと思う。
島瀬公園は佐世保の繁華街の一角にあって、入り口は片道3車線の大きなバス通りに面している。
だから「島瀬公園前」というバス停のそばでタクシーを降りて歩道に立った時、予想していたとおり、生演奏の音楽が耳に飛び込んできた。
この位置では、すぐそばを流れる車やバスのエンジンの音と混ざり合っているのではっきりとは聞き取れないが、歌っているのはどうやら若い女性のようだ。おそらくギター1本の弾き語りだろう。
僕らはとりあえずその音楽の聴こえる方角に向かって歩いた。
どんよりした天気のせいだろうか、春分の日というのに、風はつめたく、見上げればかすかに小さな雨粒がポツン!ポツン!と落ちてきているのが感じられた。
幸い会場にはいくつかテントが用意されているらしく、出迎えてくれた実効委員のあかしさんに案内してもらって、僕らはその一つに楽器や荷物を置いた。
それから舞台係の人と簡単な挨拶と打ち合わせを行って、ギターやマンドリンのチューニングなど、出番に供えての準備に取りかかった。
ステージの上では、先ほどの若い女性がギター1本の弾き語りで気持ちよさそうにスローな歌を熱唱している。
野外特有の大きなスピーカーから繰り出される音は、周りの植木屋アスファルトや建物などいろんなものに反響して、自然のエコーがかかっているようにも聴こえる。
「わあ、うまいなあ!」
声量豊かで味のあるボーカル、個性的なメロディー。
「できればお友だちになりたいよねえ!」
しまった!またヘンなことを口走ってしまった。
その女性は、最後の歌だと言って、森山直太郎の『さくら』を歌い始めた。
僕はテントの中でその歌声を心地良く聴きながら、リーダーのマンドリンのチューニングを手伝った。
ちょっと離れた所では、用務員が一人でハーモニカの練習をしている。
それから数分後、
「ほら、連れてきたよ。お友だちになりたいといっていたやろ?」
そう言って戸辺ちゃんが、歌い終えたばかりの女性シンガーを僕らの前に連れてきてくれた。
しばらく僕らはその女性といろんな音楽の話をした。
彼女は20代、名前は「まゆみ」と言って普段は佐世保や佐賀の路上でストリートライブをして回っているのだそうだ。
ギターは、お父さんが若い時に使っておられたというM社製の古い30年前のものを愛用していて、これからもこのギターを大事に使っていきたいと話してくれた。
ちなみに、僕のギターはKヤイリのオレンジサンバースト。「
きれいな色ですね!私、オレンジ大好きなんですよ。」
初めてギターのルックスを誉めてもらった僕は、気を良くして、彼女に自分のギターのオーダー部分(ヘッドネームとポジションマーク)の自慢をしてしまった。
若い女性と話をするのはすごく楽しい。と、こんなことを書くとまるで中年のおじさんみたいだけど。
実際、僕は彼女にパワーをもらって、「よし、俺も負けないように頑張って歌ってくるぞ!」と気合いが入ったのは確かである。

 かちがらすの出番は5時からになっていて、ほぼ予定どおりの時間にステージの法からお呼びがかかった。
しかしそれからが大変だった。
今回のかちがらすのメンバーは4人。リーダー、用務員、評論家、それと僕である。
一通りボーカルマイクのチェックが終り、続いて楽器の音のチェックに入った。ところが、僕のギターが出力されない。
リーダーと評論家のギターは、生音を直接マイクで拾うので問題はないのだが、僕のギターはエレキと同じライン取りなので、ギター本体に取り付けてあるプリアンプの電池が切れているとスピーカーからは全く音が出ないのである。
おそらくそのような状態だったのだろう。PA係の方がいろいろと手を尽くしてくださったのだが、結局音は出てくれなかった。
「じゃあ俺のギターと交換しよう!」
評論家がそう言って自分のギターを僕に差し出してくれた。
僕のギターは、一応アコースティックギターなので、ラインを通さなくても音は鳴る。しかし、ボディーがリーダーや評論家のギターに比べ二回りほど小さいので、その分生音も小さいという訳である。
かちがらすの演奏は、ほとんどの場合僕のギターとボーカルに合わせてみんなが演奏することになっている。だから僕のギターの音がしっかり聴こえていないと全体がバラけてしまう危険性がある。
評論化には申し訳ないとは思ったが、しかたがないので、僕は喜んで彼の好意に甘えることにした。
結局、評論家は僕の小さなギターをマイクで生取りして、僕は評論家のマーチンを同じようにマイクで拾いながら演奏することになった。
セッティングにかかった時間は、はっきり覚えてはいないが、おそらく15分くらいではなかっただろうか。
その間、繋ぎで実行委員のあかしさんが平和についての話をしてくださっていた。

 いよいよ開園。1曲目はイマジンの日本語バージョンである。これは用務員のボーカル。ギターの音はよくわからないが、とりあえずボーカルはなかなかよく会場に響いている。
「よし、これでもう行ける!」と僕は心の中で旨を撫で下ろした。
後はいつものごとく、可もなく不可もなくといった感じで、コンサートは進んでいった。
お客さんは、けっして多いとは言えない。曲が終わっても疎らにパラパラと拍手が聴こえてくる程度で、野外にしてはちょっと寂しいなという気がしないでもない。
しかし、そんなことはどうでもいい。さっきバス通りでタクシーを降りた時、そこまで演奏は聴こえていたではないか。
一生懸命に演奏すれば、きっと通行人も耳を傾けてくれるだろう。
僕は大通りにまで届けという思いで、気持ちを込めて『ふるさとが好きだから』や『昔僕らは海にいた』や『小さな島の片隅から』を歌った。
まあ実際に届いたかどうかは分からないけど、久しぶりの野外はとても気持ち良かった。
最後の歌は『花』である。
「泣きなさい 笑いなさい いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ」
用務員もけっこう気持ち良さそうに歌っていた。

 ステージを下りた僕らはテントに戻り時間を見た。6時5分。つまりセッティングの時間を差し引くと、50分間くらい演奏したことになる。
正直言って、この時点で僕はけっこう疲れていた。
自分では全く意識していなかったが、寒かったのか、あるいは緊張していたのか、やけに喉が渇いていて、何か暖かい飲みものが欲しいと思った。
他のメンバーが「寒かったねえ!」と口々に言っていたので、寒さのせいだったのかもしれない。
ギターをケースに片付けていたら、また戸辺ちゃんがまゆみさんを呼んできてくれた。
先ほど、話をした時に「この後、また路上に出て歌います」と言っていたのに、「もしかして僕らの演奏を最後まで聴いていてくれたのかな?」と思ったら、なんだかうれしくなってきた。本当はたまたまだったのかもしれないけど・・・。
それから僕らは、お互いのCDを交換し、そのことについてしばらく話をした。
「いつかまたどこかで会うことがあるかもしれないよね。でも僕らは街で会っても相手の顔が分からないので、その時はそっちから気軽に声をかけてね。」
そう言って彼女に別れを告げてから、僕らはイベントが終って静かになった夕暮れの島瀬公園を後にしたのだった。

【メンバーの様子】
 リーダーのトークはこの日もさえていた。以前もどこかで書いたと思うが、人権集会とか平和集会となると、彼は饒舌になる。まるで水を得た魚のように。お陰で僕は歌とギターに専念することができたので助かった。
それと例のごとく、選曲もなかなか良かった。フィナーレにイベントの趣旨にピッタリな『花』を持ってきた辺りは、さすがだと感心した。
そして、珍しく一緒に大きな声で歌っていたのにも驚いた。よほど気持ちが乗っていたのだろう。
ギター、マンドリンに関して、本人は所々間違えたと言っていたが、正直言って僕は気付かなかった。でも、僕もそうだが、リーダーが1時間のライブの中で1ヶ所も間違えずに弾き通すということはまずありえないので、その辺りを今更責めるつもりはない。
「間違い」と言えば、あれはコンサートのMCでだったか、あるいはその後の誰かとの会話でだったか、はっきりは覚えていないが、「今日はちょっと間違えてしまったけど、CDの中では間違えていませんから・・・」と言っているのを聞いた時は、おかしくて僕は思わず吹き出してしまった。リーダーにしてはなかなか上出来のジョークだと思う。
 用務員は今回4曲のボーカルとハーモニカを担当した。用務員の場合は僕と違って、その日によって歌い方が変わるとか、感情移入しすぎるとか、緊張するとかいうようなことがあまりないので、いつも安定したボーカルを聴かせてくれる。今回もそうだった。『イマジン』や『花』は難しい歌なのに、歌詞の一つ一つの言葉の意味を噛みしめながら、たんたんと自分流に歌い上げている。その歌唱力は「やはりさすがだな!」と思う。
 評論家に対しては、本当に申し訳ないことをしてしまった。評論家のギターと僕のギターとでは、拘急なオーディオコンポと、ラジカセくらいの格差がある。あくまでもこれは物の例えなので悪しからず。大舞台、それも本番直前でギターを交換する、しかもそれが自分のギターよりもワンランク下のギターとなれば、普通のミュージシャンなら怒り出すところだろう。
ところが、評論家はギターに対して決して「えこひいき」したりはしない。どんなボロギター(これも言葉のあや)であっても、同じように大切に扱ってくれる。まあそういうところがアコースティックギター評論家と名乗っている所以でもあるのだけど。
とは言っても、やはり僕は彼に迷惑をかけたことには違いない。
「ありがとう!評論家。」でも、ちゃんと君の弾くギターの音はモニタースピーカーから聴こえていたよ。僕のギター、ギブソンやマーチンと比べれば確かにパワーは落ちるけど、一応列記としたアコギだからね(自己弁護)。
 戸辺ちゃんには今回もすごくお世話になった。そもそも今回のコンサートへの出演依頼を持ってきてくれたのが戸部ちゃんだった。楽器やリーダーの運搬、それに会場での解除。もう今では戸辺ちゃんなくしては、かちがらすの活動はありえないと言っても過言ではないだろう。
 最後に僕自身だが、1に反省、2に反省、3・4も同じで5も反省。この次のライブからは必ず毎回電池をチェックして、二度とこういったミスを起こさないようにしたいと思う。
それにしても、本番前にまゆみさんに自分のギターを自慢したばかりだったのに、ステージに上がったとたんああいうことになるなんて、彼女の眼には僕という人間がよほどマヌケに映ったに違いない。

 今回は僕の後ろめたさから、メンバーのことをちょっと褒めすぎた感がある。その点は適当に読み流してくださいね。

【20日に演奏した曲目】
 1.イマジン
 2.ひとつぶの涙
 3.ふるさとが好きだから
 4.なごり雪
 5.昔僕らは海にいた
 6.世界に一つだけの花
 7.小さな島の片隅から
 8.花

2004年3月24日



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