僕の住んでいる町にタパスというスパゲッティーやピザの美味しいレストランがある。あなたがもしこちらに来ることがあれば、ぜひ一度立ち寄ってみてほしい。
 


タパスの告白


 一般的にピザ・スパゲッティーのレストランと言えば、店内には洋楽の静かなBGMが流れているのが普通である。

 この店もけっして例外ではなかったんだ。ただしやつが来るまではね。
やつが何者なのかはわからない。ただ仲間たちの間では評論家と呼ばれていた。はたから見る限りでは、たいして偉い人のようには見えなかったけど。
 やつは、まず中の生ビールをオーダーして仲間たちと賑やかに乾杯した。
それからスパゲッティーやピザ、フライドポテトやちくわのチーズ巻きなどを追加オーダーし、それらを片っぱしからたいらげていった。
そこまではよかった。が、突然レモン酎杯を運んできてくれた若いウエイトレスを呼びとめて、店のBGMをB-5に切り替えてほしいと注文したのだった。
きっとそのウエイトレスはこれまで1度もそういった類の注文を受けたことがなかったのに違いない。驚いたように「私ではわかりませんのでちょっと店長に聞いてきます」と言って奥の方に去って行った。
その数分後から、洋風レストランの店内には、高田渡や友部まさと・あのねのねや山崎ハコなどのちょっとパスタとは不似合いな歌が流れるようになったのである。
やつは、さも満足そうに「パスタはフォークで食べるもの」などと言いながら、割り箸を使ってスパゲッティーを口に入れていた。

 ただ数時間とは言え、店の雰囲気を洋風から和風、それもホーク喫茶風に変えてしまった罪滅ぼしとして、やつは多くの友人、知人、それに全く関係のない人たちにまでこの店の宣伝をしまくるという任務を背負うこととなったのである。
 
以下にやつがその時みんなに送ったメールを原文のまま紹介しよう。
おそらくこのメールを不信な思いで受け取った人も多いのではないだろうか。
 
タイトル: 食事はタパスで!


 皆さんこんばんは。アコースティックギターコレの評論家です。
今日は、伊万里視覚連の行事の後、友人ら6名で食事会がありました。
店の名はライフ、自転車屋の隣!あっ、間違いました。
店の名はタパス!パスタやピザをフォークで楽しみました。
えっ? パスタって普通フォークでしょ? 
いえいえ、店員さんにBの5をお願いしたところ早速チャンネルを切替て下さり、
フォークソングが流れる中、美味しく頂いて来ました。
と言うことで、タパス.タパス.タパスをよろしくお願いいたします。
 以上です。

The end.


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