鹿町中学校 人権集会


12月4日 木曜日 晴れ


 今回は、今年最後のコンサート、それも中学校の人権集会ということもあって、平日にも関わらず6人のメンバーが集まった。
リーダーの川内、用務員の武原、評論家の横田、ジョージこと円城寺、楠林さん、それに僕・幸松である。
 鹿町は、長崎県北松浦郡で、地図上で言えば先月コンサートをした吉井町の隣に位置している。
リーダーとジョージは佐世保から戸辺さんの車で、僕と評論家と用務員は、伊万里から楠林さんの車で、それぞれ別々に行って、10時30分に鹿町中学校で集合することになっていた。
ところが、僕が時間の目測を誤ってしまったために、伊万里組は約束の時間を1時間も遅れて到着するというハプニングを初っ端から引き起こしてしまったのである。
幸いコンサートは午後2時からとなっていたので、大事には至らなかったが、遅れた分、メンバー間の打ち合わせと、貴重なリハーサルの時間が短くなってしまった。それより何より、先方にご迷惑をおかけしてしまった。
「まっすぐ文化会館の方に行くように」と、行き先変更の指令を携帯で受けて、僕らが会館に着いた時、すでに時間は11時30分。舞台上には人数分のマイクがセッティングされ、ギターも僕と評論家のぶんまでリーダーの手によってきちんとチューニングが済ませてあった。
 今回の人権集会の責任者は、田中先生という中年の男の先生。学校では何の科目を担当されているのかは知らないけど、とても気さくで話しやすい方だった。
それに、僕たちのギターを「ヤイリ」とか「200」とか「40」とか、メーカーや型番で呼ばれるのには驚いた。
「田中先生、あなたさまは、ギターに関して素人ではござんせんね?」
ってな訳で、田中先生のてきぱきな指示もあり、セッティングや音作りはスムーズに進み、お陰でリハーサルは通しで1時間余りさせてもらうことができた。
 昼食は幕の内弁当。舞台の上に椅子と長テーブルが用意されて、僕らはそこでその弁当をいただいた。これまでいろんな会場でライブをしてきたが、舞台の上で弁当を食べたのは初めてだ。
食べ終わるとすぐに、その場で係の生徒たちとの顔合わせ。
今回のコンサートのために横断幕を書いてくれた人、歌詞を印刷してくれた人、司会進行をする人、コンサートの中で僕らに質問をする人、始めにかちがらすのプロフィールを紹介してくれる人、終わった後でお礼の言葉を言ってくれる人など、一人一人自己紹介をしてもらい、僕らも同じようにして返した。
そしてその後で全員と握手を交わしコンサートの成功を誓い合った。

 いよいよ開演。まず校長先生のお話、続いて係の女の子から僕らのプロフィールが紹介され、「ではよろしくお願いします!」と言う言葉を合図に目の前の緞帳が静かに上がった。
 1曲目はスローなバラード「レジスタンス」である。
レジスタンスという言葉は、この頃テレビやラジオでもよく耳にするようになってきた。国語辞典で意味を調べてみると、権力に対する抵抗という風に書いてある。かちがらすのレジスタンスは、権力というよりもむしろ時代の流れに対する心の抵抗を歌ったもののように思う。思うというのは、この詞を書いたのは僕ではなく、リーダーの河内だからだ。
「時代遅れと笑われようとも 失いたくない僕のレジスタンス」
このさびの部分を僕がソロで歌って、その後ピアノとギターのイントロが静かに入ってくる。ものすごく気持ちのいい瞬間である。
会場内の暖かな空気と、グランドピアノの美しい音色に酔いながら、僕は気持ちよくレジスタンスを歌った。
大きな拍手が返ってくる。鹿町中学校の生徒の数は170人程だと聞いていたが、拍手の大きさからしてその2倍はいるように聴こえる。PTAの方や一般のお客さんが若干加わっているにしても、そんなには多くないはず。きっと子どもたちが一所懸命に手をたたいてくれているのだろう。
それをリーダーも感じ取ってか、曲間のMCはなかなか冴えていた。例によって駄洒落を織り交ぜながら、次に演奏する曲に引っ掛けて、人の権利について熱っぽく雄弁にしゃべった。障害者の権利について、子どもの権利について、エイズやハンセン病患者の人権について、最近社会問題になっているイラクへの自衛隊派兵についてなど。まるで水を得た魚のように・・・。
 4曲目の「Names」と5曲目の「Kindness」の間には、Q&Aコーナーを設けて、いくつか生徒からの質問も受けた。
 今回のコンサートは文化祭などの行事とは違って、人権集会という授業の一環として行われたものなので、プログラムもかちがらすのオリジナル曲を中心に、みんなと一緒に歌うというよりも、じっくり聴いてもらうという曲で構成した。
それでもみんな、とても真剣に聴いてくれて、僕らは気持ちが乗って最後まで演奏することができた。
エンディングの歌は「世界に一つだけの花」、この歌だけは会場のみんなと一緒に歌った。
 演奏が終わった後、生徒の代表からお礼の言葉があり、手芸部の子どもたちが作ったというかわいい花をメンバー全員、手渡しでプレゼントしてもらった。
嬉しいなあ!本当にありがとう!大切に飾らせてもらいますね。

 緞帳が下り、楽器を片付けて、僕らは係の生徒たちに誘導してもらって会場の外に出た。時間は15時30分になろうとしていた。空は相変わらず晴れていて、コンサートを終えたすがすがしい気持ちと、とてもよくマッチしていた。
駐車場でもう一度、田中先生や係の生徒たちと賑やかに握手をして、僕らは別れた。
12月にしては暖かな風が、彼らと過ごした時間の余韻となって、僕らの心をほんのり包んでくれていた。
鹿町中学校のみんな、どうもありがとう!そして、田中先生、たいへんお世話になりました。

写真 人権集会コンサートの様子

【備考1】 打ち上げについて

 今日はせっかくこれだけのメンバーが揃ったのだからと、帰りにみんなでレストランに寄って打ち上げを兼ねて食事をした。
ここでのことを書くとまた長くなるので割愛させてもらうが、なかなか楽しく有意義なひと時だった。評論家も相変わらずの食欲で、店の人が大喜びするほどたくさんオーダーしていた。

【備考2】 メンバーの様子

●川内(リーダー) ギター・マンドリン・MC担当
 上にも書いたが、今日のトークはとても気合いが入っていた。彼の中には、人権に関して、きっと伝えたいメッセージがたくさんあるのだろう。人権・平和・環境問題等のテーマは、彼にとってど真ん中の絶好球なのである。
 それから打ち上げの時に、「俺は風紀係に全世界に向かっておこられてしまったよ!」と、さも大事件のような口ぶりで言っていた。先日アップした「偲ぶ会」の日誌のことを言っているのだ。僕は思わず吹き出してしまった。
何もそこまで大げさに言わなくても・・・。だってかちがらすのホームページなんて、1日10人くらいしか見ていないんだから。

●武原(用務員) ボーカル・ハーモニカ担当
 今回は10曲中4曲彼がボーカルをとった。中でも「夢」は素晴らしかった。僕はかちがらすの中で一番歌が上手いのは用務員
だと思っている。この「夢」という歌はかなりの歌唱力がないと歌えない。というより歌詞を伝えられない。そんな難しい歌を切々と歌い上げる用務員の歌唱力はそばで聴いていてもさすがだと思う。僕なんかではとてもああは歌えない。
ただ一言言わせてもらうと、「Names」で歌詞を忘れた時、それをリーダーの長いしゃべりのせいにしたのは良くなかったね。

●横田(評論家) ギター担当
 今回もマーティンの音は冴えていた。「夢」のギターソロもずいぶん板に着いてきた感じがする。それに、「一粒の涙」と「ピクニックに行こう」はカポを上げてCからの転回にしてからすごく良くなったように思う。
評論家はコンサートの直前まで、休みを取るかどうか迷っていたようだが、結果的には思いきって参加してよかったと言っていた。

円城寺(ジョージ) ボーカル・カズー担当
 ジョージは、「美しい涙」の2番と、「ピクニックに行こう」、それと「世界に一つだけの花」を用務員と二人で歌うことになっていたのだが、リハーサルで張り切って歌い過ぎたせいか、本番では咽を嗄らしてしまって、いつものような元気のいい声が聴かれなかった。彼の場合は、なかなか普段大声を出して練習ができる環境にないので、しかたないと思う。
でも、やはり陽気なジョージがいると、それだけでその場の雰囲気が明るくなる。

●楠林さん ピアノ・パーカッション担当
 今回、楠林さんには会場備え付けのグランドピアノを弾いてもらった。さすがに生ピアノはいい。楠林さんの流れるようなアルペジオに酔いながら、僕は「レジスタンス」と「美しい涙」と「小さな島の片隅から」を気持ち良く歌った。
それからもう一つ、今回初めてボンゴというパーカッションを、「一粒の涙」「Kindness」「ピクニックに行こう」などアップテンポの曲に軽く入れてもらった。
パーカッションは独学だそうだが、なかなか感じよく決まっていて、いつも演奏している曲なのに、とても新鮮なサウンドに聴こえた。
かちがらすもこれからは少しこういったリズム楽器も取り入れて、演奏の幅を広げて行ったほうがいいのかもしれない。

●戸辺さん(マネージャー)
 戸辺さんには、この数年ずいぶんお世話になっている。今回も朝早くから送迎、楽器の運搬、それに会場での雑用まで、ほんとによくお世話してもらった。
かちがらすは野郎ばかりのむさ苦しいバンドなので、戸辺さんみたいなおばさん(いや、失礼!」、美人のお姉さんがいてくれると僕らとしても気持ちに張りが出てくる。それに何と言っても楽しい。
 ただ残念だったのは、帰りに寄ったレストランで、一緒にビールが飲めなかったことである。
戸辺さんごめんなさい、目の前で僕らだけ飲んで。こんど忘年会ではぜひ一緒に心置きなく飲みましょうね。

【備考3】 鹿町中学校人権集会で演奏した曲目

 1.レジスタンス
 2.一粒の涙
 3.美しい涙
 4.Names
 5.Kindness
 6.ピクニックに行こう
 7.夢
 8.傷ついた心の君へ
 9.小さな島の片隅から
 10.世界に一つだけの花

2003年12月9日


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