ポンポコタヌキとカメムシおばさん


9月14日 日曜日 晴れ


 これは日曜日の朝、長崎線の電車の中での話である。
車内は、日曜日というのにけっこう込み合っていた。
例によって、僕と評論家は座席に座り、ポンポコタヌキは僕らと話をするために通路に背中を向けた格好で立っていた。
誤解のないように書いておくが、これは決して僕らの身分の「上下関係」などではない。優しいポンポコタヌキの意気な計らいなのである。
電車に乗り込む時点で、「お年寄りは座って座って!」と言いながら僕と評論家を座席に押し付け、自分は、「私は皆さんよりまだわかいですから・・・」と大声でそのことをやけに強調しながら僕らの横に立つ。年齢なんて実際には一つしか違わないのに。
 まあ僕としては、座らせてもらうこと自体非常にありがたいことなので、そのことに対して抗議したりはしない。それどころか「俺たちって優しい後輩を持って幸せ者だなあ!」とプラスに解釈して、素直にその行為を受けることにしている。
 そんなポンポコタヌキの優しさが今回は凶と出たのである。

「ほらっ、あなたの肩にカメムシが止まっているわよ!」
タヌキの背中越しにおばさんが声をかける。
おばさんの年齢は声の感じからして60代くらいだろうか。
僕と評論家は、カメムシがどんなやつなのか、いやというほど知っているので、
「おいっ絶対に手では触るなよ!」
と口をそろえて忠告してあげた。
タヌキとしても、やはりカメムシとは関わりあいたくないのだろう。
おばさんに背中を向けたままでじっとしている。
するとおばさんは、どう思ったのか、タヌキの肩からカメムシをつまみ取って、
「はい、カメムシ!」
と、タヌキに手渡そうとした。
「はい、と言われても困るんですけど・・・」
タヌキは、なさけない声で、そのプレゼントを拒んだ。
そしたらおばさんは、
「私がこんなもの持っていたってしょうがないじゃないの!」
と口を尖らせ、「あなたの服に止まっていたんだからあなたが責任持ってなんとかしなさいよ!」といわんばかりにタヌキの手に押し付けてくる。
その強引さに観念したのか、
「はっ、はい、ありがとうございます!」
とさらになさけない声で、気持ちのこもっていないお礼を言って、タヌキはしぶしぶその贈り物を受け取った。
カメムシはちゃんとティッシュペーパーに包まれていたそうなので、幸いにもあの匂いの攻撃を受けることはなかった。
タヌキは、そのティッシュで丸めたカメムシを、持っていたジュースの空き缶の中に入れて、それをペットのごとく大事に抱えたままで電車を降りる羽目となったのであった。
めでたし めでたし!

2003年9月23日



【備考】  この日はポンポコタヌキ君のオリジナル曲「一人歩き」のレコーディング日でした。
録音は、佐賀の楽器店のスタジオを借りて、うちのメンバーの評論家と用務員がプロデュースして行いました。
完成した作品は以下のタヌキ君のホームページで聴くことができます。
ぜひ皆さん一度(とは言わず何度でも)聴いてみてください。



 
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