肉眼で見る星の大きさについて


 今、6万年ぶりに火星が地球に大接近しているという。
残念なことに、僕は実際にそれをこの目で見ることはできない。しかしすごく歓心は持っている。
そこで詳しい情報だけでもと思い、パソコンでインターネットを開き「火星の大接近」というキーワードを入力して検索してみた。
 画面上に上がってきた記事の内容は、新聞やテレビ、ラジオなどで毎日紹介されていることとほとんどダブっていたが、その中に一つ、僕にとってとても興味深い一説があった。
 それは、「火星は肉眼でいったいどのくらいの大きさに見えるのか?」というもので、そこの記載によると、「1キロメートル先の直径12センチメートルくらいのリンゴを見るに等しい」と言うように書かれていた。
これなら実際に目で見ることはできなくても、頭の中で想像することが可能だ。なかなか分かりやすい例えではないか。
それにしても、この1キロメートル先とか12センチメートルという数字はいったいどのようにして割り出されたのだろうか?
僕はそれまでに調べた火星に関するデータをもう一度引っ張り出してあれこれ考えてみた。そしてやっとその計算方法らしきものを見つけ出した。
何ということはない、火星の直径(キロメートル)を地球からの距離(キロメートル)で単純に割ればいいのだ。
火星の直径は6794キロメートルだから、それを現在大接近している時の地球との距離5576万キロメートルで割る。答えは、0.000121843キロメートル。
こういうのを宇宙の縮尺というらしい。つまり、地球との距離を1キロメートルにするために、距離に比例して火星の直径も縮めるわけだ。
但し、この割り出した0.000121843という直径の単位はキロメートルである。だからそれをもっと分かりやすくするために、センチメートルに直しておく。1キロメートルは100000センチメートルなので、100000をかけて・・・出てきた数字は12.1843(センチメートル)。これが僕の期待していた答えだ。
 それにしても、直線で1キロメートル先なんて、みんな見たことがあるのだろうか?少なくとも僕には覚えがない。覚えがないからピンとこない。だったら、いっそのことサイズをさらに10分の1縮尺して、100メートル先の大きさを割り出してみたらどうだろう?100メートル先なら、ほとんどの人は運動会などで見たことがあるはずだ。ではやってみよう!
12.1843センチメートルを10で割ると?・・・火星の大きさは1.21843センチメートル、約1.2センチメートルになる。
これは100メートル先のビー玉ってところだろうか。しかしこのビー玉には明るさがない。そこで、ビー玉に火星の色と明るさを加えてやる。
つまり真っ暗な夜空の高さ100メートルの位置に、マイナス3等級の明るさで赤い直径1.2センチメートルのビー玉が浮かんでいる。そのように想像してみる。
よし、これで僕もずいぶん具体的に火星の映像がイメージできるようになった。

 そうなると、我々が肉眼で見ることのできる地球周辺のいくつかの星、例えば金星や月や太陽に関しても同様に計算してみたくなる。
そこで僕はこの三つの天体が100メートル先でどのくらいの大きさに見えるのかも割り出してみることにした。
 以下にその結果を記す。()内は明るさである。

●火星(大接近時) 約1.2センチメートル(マイナス3等級)
●金星 約2.9センチメートル(マイナス4.5等級)
●月 約92センチメートル(マイナス12.5等級)
●太陽 約93センチメートル(マイナス26.8等級)

 正直ぼくは、月と太陽との大きさがあまり変わらないことに驚いた。金星は一度も見たことがないが、月や太陽なら子どもの時からずっと見てきた。僕の記憶では太陽の方がはるかにおおきかったような気が・・・!
でもよくよく考えてみると、それは錯覚だったと気づく。太陽と月は、地球から見える大きさがさほど変わらないからこそ、皆既日食という天体現象が起こりうる訳で、もし太陽の方が視覚的に大きかったら、日食は光のドーナツ(金環食)になってしまう。それはそれでまた神秘的なのだろうけど・・・。太陽が大きく見えるのは、きっと自ら強い光を放っているからに違いない。
そう考えてみると、やはりこの計算は間違いではなかったと確信する。

 だんだん面白くなってきた。もう乗りかけた船だ。ついでに、これらの星から逆に地球を見たらどのくらいの大きさに見えるのかも計算してやろう。同じように100メートル先という設定で。
地球の直径は12756キロメートルなので、それを各天体からの距離(キロメートル)で割って、出てきた数字をさらに10で割ればいい。計算機を使えば簡単だ。
結果は次のとおりだった。

●火星から見た地球 約2.3センチメートル
●金星から見た地球 約3.1センチメートル
●月から見た地球 約336センチメートル
●太陽から見た地球 約0.85センチメートル

 さすがに月から見る地球は大きい。暗い夜空の上空100メートルの位置に直径3メートル46センチの緑の星が浮かんでいると想像してみよう。
きっとそれは、僕らが地球上で見ているどんな星よりも美しいに違いない。そしてこれくらいの大きさの星ならば、もしかしたら、今の僕のかすかな視力でも見ることができるかもしれない。

 僕は想像してみる。
今僕は、月面に立って目の前に浮かぶ青く美しい星を見ている。「今日まで生きていて本当によかったなあ!」と実感する。
そしてその感動が大きければ、きっと僕はこの歌を口ずさむだろう。

少年よ

作詞:笠木透  作曲坂庭省吾


この小さな星を見てごらん この水色の星を見てごらん
国境線などどこにもないだろう 海と大地とが広がっているだけ
この小さな星を見てごらん この水色の星を見てごらん
山は雪をだき森林は緑 山と海とを川が結んでいる
無限に広がる宇宙の中で 君の生きていけるたった一つの星
永遠に流れる時間の中で 君のだいているたった一つの命

この小さな星を見てごらん この水色の星を見てごらん
島から島へ風はわたってゆく 海から海へ魚は泳ぎ回る
この小さな星を見てごらん この水色の星を見てごらん
雨は土にふり草原に花はすく 鳥や獣たち大地を走り回る
無限に広がる宇宙の中で 君の生きていけるたった一つの星
永遠に流れる時間の中で 君のだいているたった一つの命

2003年9月1日


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