500円のブルースハープ


 先日、バンドの練習の帰りに、評論家と用務員と僕の3人で佐世保の某楽器点に立ち寄った。そして、そこでなんと500円のブルースハープと出会ったのである。
500円??ブルースハープを知っている人なら誰でもその価格には驚くだろう。僕らも1度は自分たちの耳を疑った。
「大丈夫かよこれ、ちゃんと音は出るんだろうな!」
メーカーは、国産ギターのメーカーとしては知らない人はいないほど有名なS-Yairiである。
「これ今けっこう売れていますよ」
女店員のMさんはおっしゃる。
「じゃあ、音を聴かせてもらえますか?」
てな訳で、従来僕らがよく買っていた2500円のフォーなーのブルースハープと、その500円のブルースハープとを聴き比べさせてもらうことになった。
 僕はそれまで知らなかったのだけど、ハーモニカ系の楽器に風を送って、音を鳴らすための専用の器具があるらしいのだ。
Mさんは、その器具を使いながら2本のブルースハープの音色を僕等に聴かせてくれた。
正直言って僕には、この程度の試奏では両者の音の違いはわからない。
その時、評論家が口を開いた。
「う〜ん、やっぱり全然違うね!」
「おい、君はギターだけではなく、ハーモニカまで評論するきかい?」
けっして、評論家の耳を疑うわけではないが、それなら本当に違いがわかるかどうか、当てっこしようということになった。
Mさんが音を鳴らす。
「さあこれはどちらでしょう?」
「フォーなー!」
「残念でした!ヤイリです。」
人の五感というのは、案外先入観によって左右される場合が多い。
 そう言えば以前こんなことがあった。友人数人で長崎旅行をした時、昼食にチャンポンを食べた。
「やっぱり本場・長崎のチャンポンはよそのとは違って美味しいなあ!」
口々にそう言いながら店を出て看板を見たら、なんとリンガーハットと書いてあったのだ。後で皆で大笑いをした。
 きっと評論家のばあいも同じようなことではないかと思う。
もちろん、しょっちゅうブルースハープを吹いている人なら、2500円のフォーなーと、500円のヤイリとの違いは、本物の長崎チャンポンと、カップめんの長崎チャンポンの違いほどにはっきり聞き分けられるのだろうけど。
 結局この日、7月のライブで使用するために、500円のCキーのブルースハープを1本購入して、僕らは店を出た。

 近年はデフレのせいか、いろんな物が安価で手に入るようになってきている。僕らが学生時代ギターを始めた頃は、ブルースハープは安くても1本2000円以上していた。だから欲しくてもなかなか買えなかったものだ。
それはギターの弦に関しても同じである。当時1番安い弦でも1セット1000円から1500円くらいしていたのが、現在ではかなり上質のブロンズ弦でも5・600円程で買えるようになった。
ギターにしてもそうだ。いつだったか街の楽器点の点頭で、1本6000円という新品のフォークギターを見かけたことがある。はたしてそのギターがどの程度使い物になるか、それは分からないけど。
 事の是非はともかく、今は何でも簡単に手に入れられる便利な時代になったんだなあと、改めて実感させられた今回の500円のブルースハープとの出会いであった。
2003年6月28日


 
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