|
かちがらす結成25周年記念ライブ(後編) 黙っていれば友だちになれない 叫ばなければ消え去ってしまう 私たちが生まれてきた時から 育ててきた何かを伝えあうために 千切れかけた世界の 心と心を繋ぎあうために 私たちの歌が 今ここにある コンサートは、リーダーのちょっぴり気障な詩の朗読から始まった。 このフレーズ、20数年前にテレビで放送されていたコッキーポップという音楽番組の冒頭で流れていたものらしい。 詩の朗読なんてめったにやったことのないリーダーは、よほど緊張していたのだろう。途中どこを読んでいるのかわからなくなったそうである。 でも、横で聴いていて僕は「なかなかうまい演出だなあ!と感心した。 この感動的な台詞のお陰で単純な僕は、すっかりその気になってしまった。 「そうか、何かを伝えるために俺たちの歌があるのか。よ〜し、じゃあ今日はたっぷりみんなに聴いてもらうぞ〜。」 心の中でそう意気込んで、カウントを取った。 「ワン トゥー スリー フォー」 オープニング曲は『かちがらすのテーマ』である。エートビートの軽快なリズムで、緊張をほぐすにはもってこいの曲である。 緊張と言えば、演奏している僕らもだが、最初はお客さんたちも同じように緊張しているものである。コンサートが始まったばかりの時は、お互いにその糸を引っ張り合っているようなところがあって、開場の空気もピンと張り詰めている。どちらかがそれを緩めると、相手側も緩めて、開場の雰囲気は和やかになるのだが、そこまで持って行くのに下手すると何曲もかかってしまうことがある。 そんな時に最も効果的なのが手拍子である。僕は練習の時に評論家に言っておいた。 オープニングの曲ではギター弾かなくていいから、立って手拍子をしてほしいと。 しかし、その必要は全くなかった。自然と起こってくる手拍子と演奏し終わった後の大きな拍手。僕は心の底から「ありがとう!」の気持ちを込めて客席に向かって深くお辞儀をした。 1曲目を演奏し終った時点でメンバー紹介。今回は自己紹介になっている。6人が一人ずつ順番で名前と担当楽器などを紹介した。リーダーは「時間はたっぷりあるので何かしゃべってもいいよ」と言ってくれていたのだが、みんな(リーダーと僕以外)はそれ以上のことはしゃべらなかったように思う。 リーダーは相変わらず自己紹介の時から駄洒落を連発していた。本人が言うように「25年間の総集編」だけあって、僕らにとっては、いやっ、お客さんにとってもなじみのジョークばかりではあったが、それなりに受けていたようである。「かちがらすのお客さんって、ほんとみんないい人ばかりだよなあ!」と僕はつくづく思った。 1部は、かちがらすスタンダードライブということで、オリジナル曲を中心に演奏し、曲間ではリーダーが寒い駄洒落を織り交ぜながら平和や人権についてのメッセージをぶつける、いつものスタイルで進めて行った。 参考までに1部で演奏した曲目を書いておこう。 1. かちがらすのテーマ 2. ひとつぶの涙 3. ふるさとが好きだから 4. 昔僕らは海にいた 5. 夏の天使 6. 平和と平等をあきらめない 7. 優しさの種を巻こう 6曲目の『平和と平等をあきらめない』という歌は最近産声をあげたばかりの新曲である。作詞はリーダーで作曲がこの僕。完成したのはなんとライブの2週間くらい前で、ボーカルくじを引いてしまった用務員は、必死でその難しい歌詞を覚えていた。 正直、僕はこの歌に対して、とてもグレードの高い作品に仕上がったと思っている。 リーダーのストレートなメッセージ。それを過激に感じさせない優しいメロディー。用務員の力強いボーカル。メリハリのきいたギターのアンサンブル。そして、それらを効果的に盛り上げてくれる迫力ある楠林さんのピアノ。 アレンジはけっしてまだ完全ではないが、演奏していて「これぞ、かちがらすサウンド!」って感じがして、とても気持ちよかった。 1部の最後は『優しさの種を巻こう』である。この歌は最近のライブではスタンダードナンバーになっている。今回のライブがパキスタン大地震のチャリティーを兼ねているということで、1部の最後に持ってきたのだ。 この歌を歌い終えてから僕はそっと腕時計に触れてみた。針は3時40分を差していた。 「ええっ!もう1時間も経っていたのか。」 そんなに経ったとは思えない、とても短く感じた1部のステージだった。 ここで10分間の休憩。その間に舞台の上ではスタッフたちによって椅子が並べられて、2部に向けての模様替えが行われた。 2部はみんな椅子に座って演奏することになっている。最も中心に梅さん、その周りをメンバーが囲むといった配置で。 「誰かの家にみんなで集まって、楽しくギターを弾きながら団欒している、そんな雰囲気で行きましょうよ。」 スタッフ間のミーティングでそのように話し合われていたのである。そして、リラックスできるように僕らの足元にはペットボトルのお茶が1本ずつ用意されていた。 2部のステージは『いつか見ていたあの夢のように』という僕らのオリジナル曲で始まった。 これは、ギターを弾き始めた頃のことをあれこれ回想し、今こうしてステージに立って歌うことができるのは、あの時ギターと巡り合ったお陰だと、そのことを神様に感謝している、そんな内容の歌である。 歌詞に「かぐや姫」や「陽水」や「拓郎」などのフォークシンガーの名前が登場することから、2部のテーマに合うのではないかと言うことで挿入歌に選んだのだ。 リーダーと評論家と3人でギターを弾きながら僕はたんたんと歌った。 1曲歌い終わったところで梅さんの登場。会場は待ってましたとばかり大きな拍手。 ここから後は梅さんにリードしてもらいながら和やかな雰囲気で楽しく進んで行った。 1曲ごとに、梅さんのマニアックな解説が入り、僕らもその歌についての思い出やギターを始めるようになったきっかけなんかをチョコッとしゃべると言った感じで。 今回は、全曲分の歌詞を小冊子にしてパンフレットとして配っていたので、お客さんたちも、それを見ながら一緒に歌ってくれた。 このコーナーは理屈抜きで楽しかった。お客さんたちにも同じように楽しんでいただけたことと思う。 以下に2部で演奏したフォークソングの曲目を記しておこう。()内はボーカルを取った者の氏名である。 1. いつか見ていたあの夢のように(幸松) 2. あの素晴らしい愛をもう一度(用務員) 3. 戦争は知らない(戸辺ちゃん) 4. イムジン川(用務員) 5. 神田川(幸松) 6. 22歳の別れ(ジョージ) 7. 花嫁(戸辺ちゃん) 8. 遠い世界に(用務員) ここまで歌ったところで僕は初めてペットボトルの蓋を開けてお茶を一口飲んだ。 「さあて、次からは再びかちがらすのオリジナルソングに戻る。」 引き続き梅さんに曲の紹介をお願いしながら、僕らは『約束』と『僕たちのフォーク喫茶』の2曲を演奏した。 気分はもう最高だった。梅さんに紹介してもらうと、僕らのこんな楽曲でもすごく良い歌に思えてくるから不思議だ。おまけに、先程のフォークソングの余韻がまだ心に残っている。 僕は歌詞の一つ一つの言葉の意味を噛み締めながら、気持ちを込めてこの2曲を歌った。 次の歌は、梅さんのオリジナルで『僕たちの船出』。ツービートの軽快なリズムで、ザ・ナターシャセブンのサウンドを髣髴させるとても楽しい曲である。 歌詞も、「一度しかない人生だから未来に向かって前向きに生きて行こう!」と言うような内容で、「日中友好九州青年の船」のテーマソングにもなっているのだそうだ。 この歌をかちがらすが演奏して、梅さんと一緒にみんなで歌った。 いよいよコンサートも大詰め。最後の歌は『小さな島の片隅から』。 ここで梅さんには退席していただいて、舞台のセッティングを元の状体に戻し、僕らは再びマイクの前に立った。 リーダーが「今日は本当にありがとうございました」とお礼の挨拶をしてから、最後の歌『小さな島の片隅から』の静かなイントロに入った。 「この歌には僕らの言いたいことがすべて凝縮されています。」といつもリーダーは言っている。確かにこの歌詞にはいろんなメッセージが詰まっている。戦争、平和、人権、環境、そして差別。僕のつたない歌唱力ではこれらを十分に表現することはできないかもしれないが、とにかく少しでも聴いてくれている人たちの心に響くようにと、僕は一所懸命に歌った。それはきっと他のメンバーも同じだったと思う。 歌い終わった後、なんとも言えない充実感があった。25年間、音楽を続けてきて本当によかったと思った。そして、その間僕らを応援し支えてくれた多くの人たちに心からお礼を言いたかった。 アンコールの大きな拍手と、子どもたちから可愛い花束をもらって、僕らはアンコール曲『Good by see you again』を歌った。 そうやって、2時間30分に及ぶライブは幕を下ろしたのだった。 終わった後で時計を見ると、予定していたよりも少し超過してしまっていた。でも、僕らにとってはアッという間に過ぎていった、すごく楽しい、とても有意義な時間だった。 まだまだ続く。 2005年12月9日 |