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明日の神話もってこい10000人まつり あの大イベントから、早いものでもう3週間が経ってしまった。 祭の後、いつもそうなのだが、僕はどうしようもなく脱力感に襲われる。そして、しばらくは何もする気が起こらない、ある種の無気力な状態に陥る。 イベントにかけてきた情熱が強ければ強いほど、その症状も重い。 な〜んて、弁解ばかりしていたのでは見苦しいので、そろそろ重たい腰を上げて、気合を入れて、日誌を書いて行こうと思う。 前夜祭(その1) 6月3日 土曜日 晴れ 今回のかちがらすの長崎行きは一泊二日の旅行としゃれ込んだ。 「みんなで一緒に飲める機会ってめったにないからさ、土曜日の夜に長崎に集まって、「田舎」でパーッと前夜祭でもしようよ。」 ライブへの出演が決まった時から、そういう計画がメンバーの間で持ち上がっていたのだ。 前日から来れるメンバーは、リーダー、用務員、評論家、楠林さん、戸辺ちゃん、それと僕の6人。 僕が代表で、梅さんのワインバー「田舎」に最も近い長崎ワシントンホテルを6人分、数週間前から予約しておいた。 みんな、仕事や距離、交通手段などの問題で、チェックインできる時間が区々である。 なので、行き違いになったりしないように、ホテルを集合場所に決めて、そこにチェックインした時点で僕に連絡をくれるようにと打ち合わせておいた。 僕とリーダーと評論家の3人は、いったんリーダーの家に集合して、それから高速バスで長崎に行ったので、チェックインしたのは5時40分頃だった。 フロントに尋ねてみると、「用務員さんは先にご到着になり、もう部屋に入っておられます」という。 フロント係の女性に案内してもらって、僕らはエレベーターで9階に上がった。 部屋は全員シングルである。僕の部屋は9階の一番奥。その先は非常口になっているという。係の人に部屋の中の構造と設備を一通り教えてもらってから、僕はギター等の荷物を降ろした。 隣はリーダー、その隣は用務員、さらにその隣は評論家という風に、このフロアの半分は、ずらっとかちがらすのメンバーで占めているらしい。 遠くから、僕と同じように、フロント係の女性に説明を受けている評論家の声が聞こえてきた。 「あいつ、えらい長いこと係の人を部屋に引き留めているが、いったい何をしているのやら。」 これは後にリーダーが教えてくれたのだが、評論家は有料ビデオの操作の説明を特に熱心に時間をかけて尋ねていたそうである。そういう話題はすぐに肴にされてしまうことを、評論家も知らないはずはないのだが・・・。とまあ、それはさておき。 今後の行動だが、8時に梅さんと落ち合って、みんなで一緒に食事に行くことになっている。 時計を見ると6時前。まだ待ち合わせの時間まで2時間余りもある。さて、どうやって時間をつぶそうか。 「あっそうだ!」 部屋が端っこであることをいいことに、ギターをケースから取り出してポロンと弾いてみた。 「うん、そんなに周りには響かない。これなら少し練習もできそうだぞ。」 ホテルの部屋でベッドに腰掛けてギターを弾くなんて、なかなか優雅ではないか。僕はコンサートツワーで地方回りをしているフォークシンガーにでもなったような、そんな夢のような気分に浸りながら、明日演奏することになっている『約束』や『すずらん通り』のフレーズを小声で歌った。 そうしていると、その音を聞きつけてか、リーダーが入ってきた。 「ねえ、オイにも少し練習させてくれん?」 ホテルにギターを持ってきているのは僕一人で、残りの分は後から戸辺ちゃんが運んで来てくれることになっている。 「いいよ!」 僕はつかの間の幸せと一緒にマイギターを手放してリーダーに渡した。 すると、まるでタイミングを見計らったかのように、僕の携帯が鳴り出した。出てみるとジョージからである。 「いま美代ちゃんから聞いたんだけどさ、めぐさんがそちらに向かっておられるそうだよ。」 「うん、らしいねえ!」 朝、本人さんからメールで直接連絡をもらっていたので、僕もそのことは知っていた。 あっ!そう言えば、「長崎に到着したらメール入れます!」と書いてあったなあ。 ジョージとの電話の後、僕は急いで形態のメール着信を見てみた。 「しまった!」 5時45分にメールが入っていて、「いまワシントンホテルのロビーに着きました」と書いてあるではないか。今は6時45分。 ということは、丁度1時間前に、めぐさんはこのホテルに来られていたことになる。 「やばい!ギターなんて弾いている場合ではないぞ!」 僕は、まだそこに居てくださることをただ一心に祈りながら、めぐさんの携帯番号をプッシュした。 久しぶりに聴くめぐさんの弾んだ明るい声。 「ああ、よかった!間に合って!」 めぐさんはこの1時間、ロビーの脇の喫茶室で一人でコーヒーを飲みながら時間をつぶしておられたのだという。 「どうもすみません!すぐに下りて行きますから。」 僕は、ギターを抱えているリーダーを一人部屋に残し、用務員と評論家を従えて急いで1階に降りた。 めぐさんはエレベーターの前で僕らを待ってくださっていた。 「私の予約しているホテルは別の所なんですけど、ホテルに行く前に皆さんにご挨拶しておこうと思って立ち寄ったんです。」 「めぐさん、ほんとうにごめんなさい!」 僕は、自分がメールの着信に気づかず、1時間も待たせてしまったことを深く詫びた。 「こんな所での立ち話もなんですから、もし時間が許すなら、部屋に来ませんか。リーダーも待ってますよ。」 そう言って、めぐさんを9階の僕の部屋に案内した。時間は6時50分。 それから1時間程、めぐさんを囲んでみんなで楽しく団欒して過ごした。 評論かも、例によって自慢の携帯電話をご披露していた。彼はこの日のためにまたいくつかストラップを買い増ししていたのだ。 「わあ!すごい数。いったい何個に増えたんですか?」 「そうですねえ、たぶん80個くらいだと思いますが・・・」 実際のところ、評論か本人も正式な数はわかっていない。というか、あまりにも密集しすぎていて自分でも数え切れないでいるのだ。 「もう、リュックには収まりきれなくなってきたので、携帯専用にカバンを一つ買おうかなと思っているんですよ。」 めぐさんは、ケラケラと笑いながら、おもしろそうに、新顔のユニークなストラップたちを一つ一つ手にとって長めておられた。 梅さんから最初の電話がかかってきたのは7時35分頃だった。 「もうすぐこっちの用事が終わるから、8時頃にはそっちに行けると思うよ。すぐに出られるようにしていてね。」 梅さんがホテルまで僕らを迎えに来てくださるという。食事場所を打ち合わせてから電話を切り、僕らは準備に取り掛かった。 「じゃあ私はこれで・・・」 そう言って帰ろうとされるめぐさんを僕らは引き止めた。 「いいじゃないですか、時間が許すなら一緒に食事に行きましょうよ。梅さんだって、野郎ばっかりよりも、女性がおられた方が絶対に嬉しいはずですから。」 強引な誘いは僕らかちがらすの十八番である。 最初、お邪魔しては申し訳ないからと強く拒んでおられたが、しつこい僕らの誘いに根負けしてか、「じゃあ、ご一緒させていただきます」と、とうとう承諾してくださった。 梅さんから2度目の電話が入ったのは、最初の電話から15分後の7時50分。もう下のロビーに来ているという。 予想していたよりも早いご到着である。準備のためにそれぞれ自分の部屋に戻っていたメンバーに声をかけて、みんなそろったところで一緒に下に下りて行った。そして梅さんに会うなり、真っ先にめぐさんを紹介して、食事にお誘いしたことを告げた。 梅さんとめぐさんは初対面ではない。25周年コンサートの後の打ち上げで一緒にお酒を飲んだ仲なのだ。 梅さんも、数ヶ月ぶりの再会をすごく喜んでくださった。 「もっちろん、大歓迎!」 「ほらねっ、僕の言ったとおりだったでしょ。」 それから、みんなで長崎の夜の中華街を歩いて、その一角にある「王鶴」という料理屋さんに入った。 この店は昨年来た時に利用したので僕らも知っている。というか、「食事場所は王鶴にしましょう」と僕らが梅さんにリクエストしたのだ。 昨年は2階の和室だったが、今回は1階のテーブルに席を取った。 「さあ、明日のイベントの成功を祈ってみんなで乾杯しよう!」 梅さんの音頭で僕らは生ビールのジョッキを合わせた。 ホテルに僕らを迎えにくる前に、梅さんがここに寄って予め注文をしてくださっていたのだろう。何も言わないのに次々と料理が運ばれてくる。 中華料理というのは、テーブルの中央に大皿に盛られた料理が並び、それをみんなが小皿で分け合って食べるスタイルが一般的である。 ここも同じで、王鶴名物と言われているハルマキをはじめ、シューマイや八宝菜、エビチリ、皿うどん、焼き豚、バンバンジー、コーンスープといった豪華な料理が並んで行く。梅さんが僕らの分を、好みをききながら一つ一つ小皿に取り分けてくださる。 「梅さん、僕らの世話ばかりで自分の食べる暇なんてないんじゃないですか?」 「そんなことないよ。ちゃんと食べてるから大丈夫。」 いつものように、音楽談義や明日のイベントの話などをしながら、会食は楽しく進んで行った。 「幸松さん、ライブの前日はお酒は飲まないことにしてるとおっしゃっていませんでした?」 ギクッ! 「自分たちだけの時はそうなんですけど、こういう嬉しい時は別です。」 僕はめぐさんに、その場で繕った苦しい言い訳をした。 実際、梅さんやめぐさんを前にして全然飲まないという訳にはいかない。明日の僕の個人的な喉の心配よりも、今この時の楽しい雰囲気を優先すべきなのだ。な〜んちゃって。 前夜祭(その2)に続く 2006年6月28日 |